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土屋雅史×玉乃淳 “たった一つの条件”

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サッカーへの恩返し 

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玉乃 僕の話なんかより来年以降Jリーグの放映権元が変わり、目まぐるしく放送形態が変わりそうですね。土屋さんはどう観察されていますでしょうか?

土屋 メディアの人間としては、思ったよりテレビからネットに移行するのが早かったなと思っています。もう少しテレビの時代が続くのかなと思っていましたから。ただ、1人のサッカーファンという視点で見ると、安く試合がいっぱい見られるようになるわけですから、とても良いことだと思います。カメラ台数もこれまでより数台増えるみたいですし、お金もさらに掛けられるようになるわけですから期待は当然できますよね。ただ、中継の質はカメラの台数で決まるわけではないですからね。中継の質という意味では未知数な所もあるかと思います。作る側がサッカーを好きでないといけないと思うんですね。このゲームにはこう意味があって、こういう背景があって、だからこのタイミングでこの選手を映す、みたいなものが必要だと思っています。そうでないと普段からサッカーを愛して、お金を払って、いつも見てくださっている方に満足いただけないと思いますから。僕のようなプロデューサー職の人も含めて、制作スタッフ、実況、解説者全員がサッカーが大好きだという前提がなければ、中継の制作費にどれだけお金を掛けたとしても、必ずしも良い中継になるとは限らないと思います。

玉乃 土屋さんの人脈とか、サッカーへの造詣の深さを考えると、例えば指導者とか、チームのスカウトとかGM(ゼネラルマネージャー)、この先ありとあらゆる可能性が考えられるかと思うのですが、ご自身では考えられたことはありますでしょうか?

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土屋 確かに、単にサッカーが好きというだけでは絶対に会えないような人たちに、これまで沢山会えてこられたので、その多くの出会いを活かして、夢ある子供たちにサッカーを楽しめる機会を作ってみたりできないかな、なんて考えたことはあります。他にも「これができたら面白そうだな」と思ったりすることはありますが、今は現在の仕事に全力で向き合っています。

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玉乃 サッカーが大好き、サッカーに恩返しがしたい気持ちが溢れ出ていますよね。今現在、恩返し率で言ったらどれくらいなのでしょうか?

土屋 さっきも言いましたけど、サッカーのどこがいいかって、絶対終わりがないんです。「サッカー好きを一人でも増やすこと」が僕の夢なんですけど、その目標って達成することは絶対ないので、だから一生サッカーに関わっていくことができるんですよ。終わりのない夢があって本当にラッキーだと思っています。当然玉乃くんを起用させていただいているのもその夢の実現のための手段の1つです。たぶん玉乃くんを通じてサッカーを好きになった人が増えたとも思いますし。

玉乃 もしそうでしたら嬉しいです。

土屋 しかも表に出る人ってリスクを背負って、僕も含めた会社のために矢面に立ってくれているわけですからね。僕らの仕事は万全に矢面に立っていただける状況を作ることです。当たり前ですけどそこは絶対に手を抜いていないです。僕らのミスで出演していただく方になんらかの影響がでることは、絶対にあってはならないですから。

玉乃 土屋さんのその想いが、今後何十年、何百年、全てのサッカー中継に引き継がれていくことを祈ります。

土屋 まあ実際は、想いがなくても仕事はできるんですけどね。時は流れていくので。想いはお金にならないから、時に軽視されがちになりますよね。でも、僕はサッカーへの想いや小さなこだわりを、感謝の気持ちを、自分ができる範囲でどのような形であっても伝え続けられればと思っています。

玉乃 今日もラフな格好をされていて、いつも全く飾らない人柄ですが、最後にテレビマンとして、そしてプロデューサーとしての顔を見ることができました。やっぱり土屋さんはハンパじゃないです。

土屋 プロデューサーって、言われたり思われたりされても全然嬉しくなぁ。改めて、この対談を通してでも「お!そんな面白いの、Jリーグ?じゃあ、1回見てみようかな!」って思うような人が1人でも多く現れてくれたらこの上ない喜びです。

 


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サッカーの面白さを伝えたい。その「想い」に圧倒された土屋氏との対談。氏は、対談中にもある通り、僕にとっては「師」ともいえる人物です。テレビのプロデューサーという肩書きは、華やかさや派手さというイメージを伴いがちですが、至ってシンプルに自分の想いを貫き働く姿勢は、そのようなイメージとはかけ離れ、今もなお、僕の人生のお手本になっています。この対談を通じて、現役引退直後、路頭に迷い海外を流浪していた僕にサッカーの面白さを改めて教えてくださったことを思い出しました。あの時、どれだけ救われたことか。

今度のJリーグ2016シーズン最終節、サッカーへの感謝の気持ち、土屋氏への感謝の気持ちを胸に、解説に臨みます。ジェイ・スポーツが誇る最高の中継チームと共に、少しでも多くの方にサッカーというスポーツの持つ魅力が届けばという願いをこめてお送りいたします。

 

土屋雅史(つちや・まさし) プロフィール

群馬県立高崎高校を卒業し、早稲田大学法学部を経て、2003年に株式会社ジェイ・スポーツへ入社。「FOOT!」のディレクターを務めたのち、プロデューサーとしてJリーグの中継を担当する。国内外カテゴリー問わず、サッカーに関する見識は、業界内有数で、「ツチペディア」などの異名も。多忙な業務をこなす傍らで複数媒体にコラムを寄稿する随一の愛サッカー家。