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下田恒幸×玉乃淳 “声に想いを乗せて”

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異国の地で「実況」と出会う

下田 別にエリートじゃないよ。帰国子女っていわれても、父親の転勤の都合で小学校3年から中学1年までの4年間、サンパウロに住んでいただけだから。当時を振り返ると、ポルトガル語をもう少し勉強しておけばよかったかな。日本人学校に行っていたからその機会には恵まれなかったけれど。でもブラジルでサッカーに出会ってね。だからこそ、今がある。とにかくサッカーだから、みんな。当時の日本はスポーツ=野球の時代で、父が巨人ファンだったから、僕も巨人ファンで野球好きの少年だったですよ。で、ブラジルに住んでからサッカー中継を見たり、聴いたりするようになったわけ。 

玉乃 そのときを振り返って、日本の実況解説とブラジルの実況解説に違いはありましたか? 

下田 それまでは特にスポーツ実況に対して意識はなかったけれど、ブラジルでサッカー中継を見たり、ラジオで聞いたりするようになってから、これはオモシロい!と思うようになり…そこで初めて「実況」というものを意識するようになったのかな。たぶん、小学校4年のとき。とにかくインパクトがあって。ずぅっと喋っているでしょ、向こうの実況って。リズムが良くてね。ポルトガル語が理解できなくても、選手の名前と、プレーの種類、パスとかドリブルとか、いくつかの知っている単語をつないでいくと、どの辺で何が起こっているのかが頭に浮かんでくるんだよね。それがすごく魅力的で。実況を真似するクラスメートがいたぐらい。学校でも凄く人気があったよね。ブラジルの実況は、とにかくよく喋る!ただ、あの実況を日本でやったら相当叩かれると思うけれど。 

玉乃 サッカーの本場ブラジルで「実況」との出会いがあったわけですね。中学で日本に帰ってきてからはどのような歩みだったのでしょうか? 

下田 普通につくし野中学に通って、普通に高校受験して都立町田高校に入学して、運よく慶應大学に入り、で、卒業して運よく仙台放送に入るという、ごく平凡な、山も谷もない人生ですよ。サッカーのプレー経験は…運動神経もなかったし、その頃はメンタルもすごく弱くてすぐ諦めるタイプの人間だったから高校1年生でやめちゃいました。 

玉乃 想像つかないです。初志貫徹で職人気質のファイター系かと思っていました(笑)。帰国されて、好きだったブラジルの実況と離れちゃったわけですよね? 

下田 そう。で、今度は野球の中継を聞くようになるわけ。親もテレビばかりは見させてくれないので、部屋で勉強しながらラジオの野球中継を聞いていたの。当時の日本にはサッカーのプロリーグがあったわけではなく、当然中継もないから野球だよね。で、ブラジルで実況の面白さを感じていたから「実況目線」で聞くようになって。小5の時の担任から「君は、よく喋るから将来アナウンサーになったら?」って言われていたこともあって、「実況」ってのは、いつも意識していたと思う。 

玉乃 小学生のときにご自身の将来の職業を決めていたんですね!自立するのが早すぎです。それはその業界でトップの人になりますよね! 

下田 玉乃くんが、小さい頃からサッカー選手になりたいと思うのと同じ感覚じゃないかな。それが「実況」だったというだけで…。 

玉乃 すごく狭き門なのでしょうか、アナウンサーって? 

下田 その年の新卒で採用されるアナウンサーは、基本的に1人、2人だし、地方局でも多くの応募があるから、狭き門なのかな。採用されるには、滑舌の問題もあるし、喋り方、声質もあるから、誰でも、というわけにはいかないとは思います。僕は運よく仙台放送に入社し、15年半、仕事をさせてもらいましたけど、ここでアナウンサーとしての自分の骨格を作る事ができたのは確か。いい中継するためにどういう準備が必要かとか、競技との向き合い方とか。色々なスポーツ中継にもチャレンジさせてもらいましたし。 

玉乃 スポーツのジャンルに関係なく楽しめるものですか?競技によって好き嫌いが出て、実況にも影響してしまいそうな気がしますが。 

下田 僕は何をやっても楽しいと思っちゃうタイプ。例えば、同じサッカーでも、国が違ったり、カテゴリーが違ったり、同じ競技の中でも好みとかいろいろあるでしょ。でも、僕にとっては、それはあまり関係ない。やればやるだけ全部好きになっちゃう。「実況」という仕事を通じてね。バスケだって、バレーだって、ドッジボールだって(笑)。 

玉乃 「実況」という仕事を通じて様々なジャンルのスポーツに関わってこられたんですね。僕は逆かと勝手に想像していました。サッカーが好きだからサッカー中継の実況をやられていると。