TAMAJUN Journal

河野淳吾×玉乃淳 ”競輪の世界は、生きるか死ぬか”

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うれしいお便りがありました。

「いまのところA級の中位くらいだから来年中にはS級をとりにいきたいところ。来年は勝負の年だよ。サッカーと一緒、着々とゆっくり上昇しているよ。気持ちが続くところまで身体がボロボロになるまでやりたい。それでポックリ死ねたら…(笑)。」

便りの主は、河野淳吾氏。徳島ヴォルティス時代のチームメイトであり、信頼しあえる友人からの近況報告でした。文中のA級やS級というのは競輪選手の階級をあらわすもの…そう、彼は競輪選手なのです。試合中の大怪我によって26歳の若さでサッカー選手引退を余儀なくされた彼は、現在第2のプロスポーツ選手人生を歩んでいます。

はたして、オリンピック競技種目にもなっている「競輪」の世界、どのような世界なのでしょう?プロスポーツ選手からプロスポーツ選手への転向のキッカケや心境は?

 

「レースに行く前は、なにがあってもいいように、身の回りをきちんと整理してから出掛けるよ。」

 

日々の練習を怠れば、

恐怖心でレースに臨めない。

練習量が精神安定剤

代わりなんだ。

 

玉乃 ジュンゴ、今日はよろしくね。

河野 事前にちゃんと言ってくれれば、スーツでビシッとキメて来たのに。

玉乃 ま、どっちでもいいや(笑)。早速だけれど、競輪選手ってどんな生活サイクルなの?

河野 練習は毎朝6時30分からで、午後ももちろん練習。サッカー選手の2部練と似ているって思われるかもしれないけれど、サッカーの場合、シーズンが始まったらメチャクチャ身体を追い込むことってないよね。競輪はシーズン中も体を追い込む。正直言って、練習はJリーガーだった頃の10倍は厳しく感じるよ。

玉乃 監督とかコーチみたいな人っているの?

河野 サッカーの監督にあたる「師匠」と呼ばれる人がいるんだけれど、俺の師匠(編集部注:高松宮記念杯などのGⅠ競走を制した高木隆弘選手の元へ住み込みで弟子入りした。)はこの世界でも特に厳しいと有名な人で、Jリーグ時代の監督の100倍は怖いよ(笑)。師匠が言うことは絶対で、どんなに理不尽なことを言われても、黙って従うしかない。たまにカチンときたりもするけど、すべては俺のことを思ってやってくれていること。俺にとっては親と同じか、それ以上の存在だよ。こうして今、プロとしてやっていけているのも師匠のお陰だし、感謝してもしきれない。多少の理不尽さも愛情として受け止められるようになったよ。まあ、最初の頃は何度やめようと思ったことか…(笑)。

玉乃 そういう師弟関係って、いまの時代にもあるんだね。僕なら2日ももたないわ(笑)。

河野 2日?…ジュンだったら2時間もたないよ(笑)。でも、師匠がこうして厳しく指導する理由が、いまは分かる。だって、この世界は「生きるか死ぬか」だから。安易にそんな言葉は使いたくないけれど、実際そうだからね。身近にも下半身不随になって、車椅子生活を余儀なくされている人もいるし、稀にレース中の事故で亡くなる人もいる。そんな世界だから、日々の練習を怠れば、恐怖心でレースに臨めなくなるんだ。言ってみれば〝練習量が精神安定剤代わり〞みたいなものなんだよ。

玉乃 月に3回ぐらいレースがあるんでしょ?毎回「これが人生最後のレース」みたいな感じなの?

河野 レースに行く前は、とりあえず、なにがあってもいいように、身の回りをきちんと整理してから出掛けるよ。それと、必ずお祈りもする。親がくれた御守りと、前の妻と子どもにもらったペンダント…レース前にグッと握り締めてね。

玉乃 うわっ!!とんでもない覚悟だね。ジュンゴはサッカー選手時代も人一倍気持ちが強いDFだったけれど、競輪でもガツガツ行くの?

河野 うん。性格的にガンガン行っちゃうタイプだよね。サッカーやっているときも、怖がったりしたことは一度もなかったな。相手が誰であってもね。競輪でも当たりにこられたりすると、やり返したくなっちゃう。危ないから本当は引いたほうがいいんだろうけれど、逆にやり返すくらいの気持ちがなくなったら、こうやって身体を使って稼ぐのをやめるんじゃないかな。

河野運転写真

玉乃 ジュンゴのなかでは、サッカーをやっていたときと同じ気持ちなんだね。

河野 一緒だよ。競技が変わっただけで、気持ちは一緒。

玉乃 なんだか、生温い生活を送っている自分が恥ずかしくなってきたよ(苦笑)。でも、なにがジュンゴをそこまで突き動かしているんだろう?だって、普通にサラリーマンとか、少なくとも命がけでない仕事にも就けたんじゃない?

河野 俺はやりたいことをやっているだけだよ。だって、人生は一度きりなんだから。

玉乃 離婚はしてしまったけれど、前の奥さんとは今でも仲が良さそうだし、娘さんにもいつでも会えるらしいね。

河野 そうなんだ。家族には感謝の気持ちでいっぱいだよ。自分がやりたいことをやるって決断した以上、やるしかないし、やり抜くだけ。サッカー人生が終わったからといって、河野淳吾の人生の挑戦が終わったわけじゃないからね。自分はなにも変わらない。生涯プロ選手だと思っている。そうした生き方を理解してくれた家族を、いまは別れてしまったけれど、一生大切にしたいと思っているよ。

玉乃 ジュンゴ…。それ、分かるわ〜!!

僕も現役を引退したとき、大好きだった彼女にフラれたんだけれど、感謝する気持ちは変わらないもんね。スポーツ選手って、引退直後に離婚するケースが結構多いじゃない?だから「金の切れ目は縁の切れ目」なんて言う人もいるけど、それは違うよね。別れても感謝しまくりだよねぇ…あれ?ちょっとカッコいいこと言っているようだけれど、2人して未練タラタラのダメ男発言かなぁ?

河野・玉乃 ハハハハハ(爆笑)。