TAMAJUN Journal

久保竜彦×玉乃淳 “それしかできん”

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野生の感覚

本物の野生やけん。

グアーとかっていって。

鹿、やばい。

 

玉乃 僕としては、ワールドカップでタツさんの姿を見たかったんですが……。

久保 出たかったよね。本当にがっかりよ。予感はあったよね。その前の2試合は本当に膝が痛くて、全然動けんかった。なんとかしようと断食するところに行って、その帰りやったもんね。新幹線の中で代表落ちを聞いた。

玉乃 海外でやりたいとか、そういう想いはありましたか?

久保 行きたかったけど、痛いけんさ。寒いけん、痛くなるって思っとったし。やっぱり1年間はこの膝じゃ無理やろうなっていうのはあったよね。やってみようかというのもあったけど、絶対壊れるなっていうのもあったけん。

玉乃 実際に海外に移籍する話も?

久保 ベルギーから来とるとか、イングランドの下のリーグから来とるとかあったよ。ロシアとか。でもロシア、寒いやん。

玉乃 ただ金沢に行くとか、普通だったら痛過ぎるから辞めちゃおうってなると思うんですが。サッカーが半端じゃなく好きだってことですかね?

久保 うん、サッカーしかないじゃん、俺。

玉乃 現役時代に見せていたあの闘争心は、いまだ健在ですか?

久保 こないだ鹿と喧嘩した。

玉乃 は?
         あ、ごめんなさい。意味不明すぎてつい、タメ口になっちゃいました(笑)。

久保 本物の野生やけん。奈良の弱いやつじゃないんよ。ピョンピョンしとるやつよ。すごいんじゃけん、グアーとかっていって。鹿、やばい。

玉乃 なんで鹿と喧嘩を?

久保 子どもがおったけんさ。子どもとキャンプしとる時に、たまたま遭遇しちゃったけん。それで、鹿がバーって来ちゃって。

玉乃 お子さんたちを守ったわけですね!! タツさんも無事で良かった。

久保 強いよ、野生は。やっぱり人間も山に行ったら強くなるんやろうね。だから山に行くよね。山で修行したりするよね。分かってる。分かってるやつが山に行くんやないかと思う。だから山で練習すればいいと思う。今だったら筋トレとかせんでも、本当の強さっていうのはやっぱり山よ、山。

玉乃 別に山に行って、鹿と喧嘩しなくてもいいんですよね(笑)?

久保 うん、走るだけでいいよ。

玉乃 野生の鹿と喧嘩したこと以外で、熱くなったりするものとか、目標や夢とかってあるんですか?

久保 なんもないね。子どものテニスとサッカーを見るとか。それぐらいか。ボーっとしとるか、家で酒飲んどるか。で、夕方から子どもの練習を見て、そんなんやね。なんもない、ホンマに。みんなから言われるよ、なにしとん? って。でもホンマ、なにもしていない。面白い練習が浮かんでこんかなと思って、たまに走ったりはしているけど。

玉乃 指導者としてですね?

久保 そう。子どもが食いつく、飽きんような練習。でもなかなかないね。こればかりは難しいな。

玉乃 それにしても、ちゃんとご飯を食べています? 痩せられましたよね?

久保 筋肉が全部落ちたけん、昔に戻った感じよ。最初の頃だって、もうひょろひょろよ。代表に行ったりしてからやね、筋肉を付けたんは。外人とちゃんとやりたいと思ったけん、付け始めたんよ。

玉乃 タツさんでも外国人選手にはフィジカルで負けているという感覚だったのですか?

久保 うん。やっぱりね。なにもできんかったイメージがあるもんね。特にデサイーとか、フランス人はやっぱり凄かった。日本のCBじゃ考えられんような感じで。

玉乃 具体的に、なにが違うのでしょうか?

久保 グンッてくる。なんなんやろうね、あれ。人間というより、変な意味じゃなくて、動物っぽいよね。弾かれたような感覚があった。

玉乃 やっぱり山ですね!タツさんが教えている子どもたちも山に連れてかなきゃですね。

久保 おう。

玉乃 …(笑)。

◆   ◆   ◆

やはり、タツさんは最高でした!!

現役の時から、どういうわけか仲良くしていただいていましたが、やっぱり大好きです。これほど飾らない人、世界中探してもそんなにいらっしゃらないでしょう。

取材したのは秋でしたが、素足にサンダルでした(笑)。まさに規格外!

周囲の目など一切気にしない感性は、「規格外」とか「伝説」という言葉が相応しいのだとあらためて思いました。

「これまでの人生、勝利とゴールだけしか考えてこなかった。」という言葉に、彼の生き様が凝縮されているような気がしています。

記録より記憶に残るストライカーと形容される「伝説」は、多くのサポーターの心の中に記憶されていることでしょう。もちろん僕の心の中にも。


久保竜彦プロフィール

生年月日 1976年6月18日
福岡県出身
「ドラゴン」の愛称で多くのファンから愛され続けている元日本代表のサッカー選手。サンフレッチェ広島、横浜F・マリノス、横浜FCなどで活躍。現在は指導者として、サッカー界の未来を担う子供達にサッカーを伝授している。

(サッカーダイジェスト 2014年11月11日号にて掲載)