TAMAJUN Journal

野々村芳和×玉乃淳 “世の中を知る大切さ”

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自分の可能性を広げる

世の中のことを知るには

どうすればいいかを

教えてあげたいんだ。

 

玉乃 大変そうですけど、凄まじいほどのやりがいがありそうですね。社長業にますますのめり込んでいるように感じますが?

野々村 現役時代を除けば、解説業でも、試合を観るうえで片方のチームを応援するなんてことは一度もなかった。それが今ではもう……ホント、サポーターの気持ちがすごくよく分かるもん(笑)。ゴールが決まれば、自然とガッツポーズとか出ちゃうからね。これは面白いよ。超気合いが入る!

玉乃 ノノさんは、現場にいろいろと口を出すタイプの社長ですか?

野々村 うーん、まずその表現がよろしくないな(笑)。

玉乃 ははは。

野々村 でもね、俺だから言っていいこと、言えることってあると思う。そこはすごく考えている。俺の言葉で選手がより良い状態になるなら、やっぱり言うべきだし。まあ、技術的なことより、精神的な部分に言及する場合がほとんどだね。チームには30人以上の選手がいて、ゲームに絡めるのは、ベンチを含めて、だいたい10数人でしょ? となると20人以上の選手がイライラしているわけだよ。そんな時に、「俺にもそういう時期はあったから」とか「みんなそんなもんだよ」と声をかけるようにはしている。それは慰めなんかではなく、モチベーションを下げないよう、やる気を失わないよう、また良い精神状態でサッカーに打ち込めるようになってほしいから。そういうことに関しては〝口を出す〞けど、試合で誰を使えとか、あの選手はこうだからどうなの、とかは絶対に口出しはしない。それは監督の仕事だから。ただ、財前(恵一)監督とはよく話すけどね。コミュニケーションは取れていると思う。

玉乃 社長としてでも、あるいは解説者としてでもいいです。サッカー選手の引退後については、どう考えられていますか?

野々村 セカンドキャリアに関する環境云々より、まず個々に問題があると思うよ。みんな大変そうだけど、なにが大変なの? という疑問をどうしても抱いてしまう。やりたいことが見つからないのが大変なのかな?

玉乃 おそらくそういうことなのでしょうね。サッカーほどの興奮が日常生活では得られないから、なにをやっていいのか明確に分からず、戸惑っているというか…。

野々村 そうだろうね。選択肢がいくつかあるかと言えば、おそらく、ないのかもしれない。でも、本人がそれを知らないのも責任がある。だから、現役時代に世の中のことを知るにはどうすればいいかを教えてあげたいんだ。今こうして社長という立場になって、若い選手たちにこうしたほうがいいよっていうのがあるとすれば、いろんな職業のいろんな年齢層の人たちと会える機会があれば、積極的に話を聞きに行ってほしい。一緒に食事をするとかでもいい。例えば、銀行員の人はどういう仕事をして、なにが大変なのかを知るだけでも、全然違う。サッカー界から一歩外に出てみれば、様々な仕事に従事して、それぞれの楽しみ、やりがいを持って日々を過ごしている人たちがいる。将来的になれる・なれないは別にして、そういったことを自分の選択肢のひとつとして持っているだけでも、引退後の可能性は広がっていくんじゃないかな。プロになれるぐらい、多くのことを犠牲にしてサッカーに打ち込んできたんだ。サッカーしか知らないのは当たり前。だからこそ、いろんな人の話に興味を持って、耳を傾ける姿勢が必要だと思う。

玉乃 現役の時はサッカーだけに集中したいという人もいますが……。

野々村 でもね、サッカーで本当になにかを成し遂げたいと思っているやつがいて、別業種の人と会って良い話を聞けたとしたら、絶対にそれはサッカーにおけるモチベーションにしかならないから。そういったなかで俺みたいに、引退後もサッカー界で生きていくんだ! っていう選択肢もあるわけだし、ね。

玉乃 ノノさんのサッカーに対する〝愛〞は半端ないですもんね。

野々村 いつからか分からないけど、日本のサッカー界の力になりたい、という使命感が自分の中でどんどん大きくなってきているんだ。思い込みかもしれないけど、でも確実に言えるのは、今でもサッカーに対してアドレナリンが出まくっているし、コンサドーレのために全力を尽くして、このクラブをもっと強くするのが、今の俺に与えられた天命だと信じているよ。


 経営者としての野々村氏へのインタビューのつもりが、話題はサッカーから離れず、そしてつきなかったことを記憶しております。紙面が足りずに、話題のごく一部しか掲載できなかったのは非常に残念ですが、野々村氏のサッカー哲学にはじまり、アジア戦略、2ステージ制に対する見解などなど、興味深い話をたくさんしていただきました。

 現役時代の探求心が経営にも色濃くあらわれているものだなと、あらためて感心した次第です。一つのことを極めれば無限の可能性が広がるということを野々村氏の言葉から教わりました。チームという枠を超え、リーグ全体、日本サッカー界全体のビジョンをも氏がえがく日もそう遠くないのではないでしょうか。

野々村芳和(ののむら・よしかづ)プロフィール

1972年、静岡県に生まれ。清水東高等学校から慶応義塾大学を経て、Jリーグのジェフユナイテッド市原(現ジェフユナイテッド市原・千葉)、コンサドーレ札幌でプレー。
引退後は国内外のサッカーの解説者などを務め、現在はコンサドーレ札幌代表取締役社長。
2015年4月28日、公益社団法人日本プロサッカーリーグの理事にも選任。

 

(サッカーダイジェスト 2013年10月29日号にて掲載)