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石塚啓次×玉乃淳 “なんとかなるやろ” は “なんとかする”

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“なんとかなるやろ” は “なんとかする”

スペインのどっかの地域で、

地元のスターになったろかと

密かに狙ってるわ(笑)。

 

玉乃 スペインへの移住は、いつ頃から考えていたのですか?

石塚 去年の暮れぐらいから、ぼんやりとかな。

玉乃 でも、これからサッカー界に戻ってくるって、けっこう勇気がいりません?

石塚 俺、京都出身やろ? 京都って家が自営業の人が多くて、家業を継ぐ前に一度、違う世界を見て人間力をアップしてくるもんなんよ。俺もそんな感じなんかなって。一度、サッカー以外の世界を見てきて、また戻る。あと、自分で一から始めるわけやし、ややこしいしがらみもないからな。今の日本サッカー界の話を聞いていたら、なかなか大変なことが多そうやけど、ただ、どこの世界も似たようなもんやね。

玉乃 そういうことも考えて、まずは海外へ?

石塚 そういうわけでもないんよ。妻に「次、なにすんの?」って聞かれても、「やりたいことないねん、仕事したないねん」って感じやったし(笑)。じゃあ、まずはどこに住みたいか考えてみようってなったわけ。それで、やっぱりサッカーは今でも大好きやし、スペインかなって思った。家族もいるし、生活を考えたら南米はなあ・・(笑)。

玉乃 じゃあ、向こうでまた一からなにかを作り上げるつもりなんですね。まさか、スペインの企業に就職して、サラリーマンになるとは思えないし。

石塚 いや、あるかもよ。だから言うたやん。この企画、『セカンドキャリアに幸あれ!!』ってタイトルやけど、今のところ俺、無職やって(笑)。

玉乃 輝かしい無職ですよ。もうすでに一度、セカンドキャリアで大成功を収めているわけですから。『サードキャリアに幸あれ!!』に、タイトルを変更しないと(笑)。

石塚 まあ、そやね。短い人生で3回も面白いことに挑戦できるやから、ラッキーと思わなね。

玉乃 今、おいくつでしたっけ?

石塚 8月で38歳。でも、おっさんやけど、スペインで現役復帰も狙ったろかなと。ただ妻は、「そんなんせんで、仕事とか家の手伝いしろ」って(笑)。そこさえ切り抜けられたら、本気でやろうかなって思ったりもしている(笑)。

玉乃 また3か月で辞めたり?

石塚 いや、続けるよ。自分でチーム作るんやから、それなら辞めさせられへんやろ(笑)。スペインのどっかの地域で、地元のスターになったろかと密かに狙ってるわ(笑)。

玉乃 でも、移住って半端な気持ちではできないですよね。

石塚 半端でも誰でもできるよ。問題はやるかやらへんかだけやろ。まあ、2年後とか、日本でフラフラしていたりしてな(笑)。

玉乃 一度ビジネスも極めたわけだから、怖いものなしでしょ?

石塚 ビジネスは成功したって言えるけど、会社としては失敗しているしな。それは極めたって言わへんやろ。

玉乃 いやいや。年商だって凄かったって聞いていますよ。会社経営も楽ではなかったのですか?

石塚 会社がデカくなるにつれて、扱う額もデカくなって、ビビっていたよ。怖くて借金なしでやっていたから回すの大変やって、楽しんでいる余裕もなかったわ。

玉乃 軌道に乗るまで、不安な日々を送っていたのですね。

石塚 いや、不安は不思議となかったな。なんとかなるやろって。

玉乃 アパレルビジネスが面白かったから?

石塚 そういうわけでもないんよ。「なんとかなるやろ」って、俺の口癖でね。実はこれ、妻が一番嫌いな言葉(笑)。ただ、「なんとかなるやろ」って、言葉の響きは悪いけど、俺の中では「なんとかする」って意味やねん。これまでもそうやって生きてきたし、スペインでも「なんとかなるやろ」でやっていくつもりや。

    ◆   ◆   ◆

 とても不思議な感性と独特の雰囲気を持った石塚氏との対談でした。「天才」の考えていることは、凡人の僕には到底理解することができませんでした(笑)。会社が絶頂期にもかかわらず、あっさりと辞めてしまう感覚や、突如として海外に移住してしまう発想と行動力。ただ、ひとつ分かったのは、自分や家族に対して決して嘘をつかない生き方をしたいと願っていて、その背景には絶対的な信念があるということです。家族と過ごす時間を最優先し、子どもたちに胸を張れるような生き方を追求している石塚氏が、とてもカッコ良く見えました。

 僕も石塚氏のように「なんとかなるやろ」という言葉を、「なんとかする」という意味で使えるように、もっと自信をつけていきたいと、あらためてこの取材記事を読み返して思った次第です。

看板近影

なお、現在、石塚氏は移住先のバルセロナで、うどん屋「宵宵祇園京都」をオープンさせ、インタビュー中、本人が敬遠していた飲食店を経営していらっしゃいます。バルセロナを訪れる日本人の憩いの場として、観戦客たちがそれぞれの戦評を語り合う場として、人間交差点を提供し、自らがこねる、うどんを振る舞っているのです。

https://www.facebook.com/yoiyoigionudon

(サッカーダイジェスト 2012年9月4日号にて掲載)