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アトレティコOB玉乃淳が見た、CL決勝の“非情な現実”

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何を、どう考えても敗因が見つからない……。

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 キックオフは現地時間5月28日の20時45分。僕は興奮を抑えようと、当日の早朝から初めて訪れるサン・シーロ周辺を散策しました。
 
 すると時間の経過ととともに、僕と同じアトレティコのユニホームをまとったサポーターが増えていきます。早い時間から群れをなす赤と白の縦縞に対して、キックオフ直前まで姿を現わさない白いサポーター。両者の態度ひとつからも、これがマドリード市南部の労働者階級に支持されるアトレティコと、同じ市内でも銀行街、高級ビジネス街に本拠地を置くマドリーとのマドリード・ダービーであることを実感させられます。
 
 選手の市場価値(つまりタレント力)にも大きな差がある両チーム。果たして僕らの下町チームは、2年前の“リスボンの悪夢”(同じくマドリード・ダービーとなった2年前のCLファイナルは延長の末にマドリーに軍配)を払拭して、悲願のビッグイヤーを掲げることができるのか。
 
 いやがうえにも期待が高まる一方で、赤と白の列にいる優しい笑顔の老夫婦の心臓が、試合中に止まってしまわないか心配でした。
 
 20時45分、キックオフの笛が鳴ります。僕はこの試合で初めて、「死闘」という言葉の意味を知りました。まさに「死に物狂いの闘い」は、指揮官ディエゴ・シメオネが試合後に語ったように、明らかに浮き足立ってゲームに入ったアトレティコが、開始からわずか15分にセットプレーから失点します。
 
 このままでは、さらに失点を重ねることも十分に考えられました。マドリーの華麗なパス回しと、一度ブロックを形成して守りに入った時の難攻不落ぶりは憎らしいばかりで、個の力はまさに“恐怖”そのものでした。
 
 それでも、この立ち上がりの時間帯を除けば、シメオネ・アトレティコのチームとしての戦い方はパーフェクトで、マドリーを上回るものでした。疲労か、あるいはピッチコンディションのせいなのか、75分を過ぎたあたりからはマドリーのほとんどの選手が足を痙攣させていたので、この時点で僕はアトレティコの勝利を確信していました。そして79分、ついにヤニック・カラスコの同点ゴールが生まれるのです。
 
 試合終盤、クリスチアーノ・ロナウドまでもがまともに動けず、すでに交代枠を使い切っていたマドリーに対して、シメオネは延長戦での勝負を選択します。あえて畳み掛けることをせず、15分ハーフの延長戦へと臨んだのです。
 
 何を、どう考えても敗因が見つかりません。
 
 結局PK戦を含め、この試合でPKを2本外したアトレティコに対し、1本も外さなかったマドリーが頂点に立ちました。120分間の死闘を総合的にジャッジするのであれば、僕はアトレティコが勝利に値したと、いまだに思っています。しかし現実は、延長戦を迎えてもまったく走力が落ちなかったファンフランがPKをポストに当て、満身創痍で空気と化していたC・ロナウドが勝利を決める最後のキッカーとなったのです。