TAMAJUN Journal

南壮一郎×玉乃淳 “この場でお約束します”

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今回は、僕もゲスト講師としてお招きいただいた「MARS CAMP」(http://mars-camp.com)のイベントから。同じくゲスト講師として参加された、株式会社ビズリーチの南壮一郎社長の講演を掲載いたします。「MARS CAMP」は、スポーツ業界で活躍する成功者が講師を務める同業界を目指す方々のための講座なのですが、以前たまじゅんジャーナルのインタビューにも応じていただいた岡部氏が、自らの著書「プロスポーツビジネス 私たちの成功事例」の出版記念イベントとして、同氏と親交の深い業界のトップランナーの方々をゲスト講師に迎え、教科書に載っていないそれぞれの体験談で構成される講演会を開催されました。

ゲスト講師の面々、もちろん僕など足もとにも及ばないスゴイ方ばかりでしたが、なかでもその体験と語り口が強く印象に残った、南氏の講演をたまじゅんジャーナルに掲載することを許可いただきました。ぜひお楽しみください。

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本当に覚悟ある人は、即行動を起こせる人 

アメリカの大学を卒業して、新入社員として外資系の投資銀行に入社しました。大学時代にスポーツビジネスの世界に憧れたのですが、その世界の先輩達から、まずはビジネスの基礎を「ちゃんとした」会社で学んできなさい、とアドバイスされ、金融業界で4年間勉強させてもらいました。このアドバイスがなかったら、今の自分はなかったと思います。

社会人4年目に、日韓ワールドカップを観戦して、スポーツビジネスの世界に入ってみたいと強く感じました。それをきっかけに、金融の仕事を続けながら、あの手この手で主体的にいろいろ仕掛けました。大リーグの全球団に手紙まで書きました。当たり前のように、お断りの返事ばかりが届く中、ニューヨーク・メッツのGMから、「入社は出来ないが、ニューヨークに来る機会があったら連絡してください」というメッセージの手紙が届き、そこには電話番号も書いてありました。一週間後、会社を休み、ニューヨークに飛びました。現地で記載されていた番号に電話してみたところ、GM本人に直接繋がり「本当に来たんだ!」という雰囲気で大笑いされてしまいました。おかげさまで、翌日にスティーブ・フィリップスGMとお会いできました。

その日の帰り道、「本当は誰に一番会いたかったんだっけ?」とふと思いました。私は、子供の頃から野球にまつわるデータで遊ぶのが好きで、大学時代も、統計学やゲーム理論の勉強に没頭しました。そういう学生時代を過ごしたため、当時、もっとも憧れていた、ビリー・ビーンっていうオークランド・アスレチックのGM(*編集部注:映画「マネーボール」のモデル。統計学を用いて選手獲得する独自の理論で球団経営する辣腕GM。)にどうしても会いたいと思いました。アスレチックスへ手紙を出したところお断りの手紙をいただいたのですが、勇気を出して電話してみました。…そうしたら、ビックリすることに本人と直接繋がってしまいまして…いきなり「Hello, This is Billy Beane」と電話口の向こうから(笑)。翌々日お会いできる約束を取り付けたのですが、実際、球団事務所に行ってみると、本人は不在でした。受付の方に「本当にいないのでしょうか?」としつこく尋ねて、居座り続けたら、ビリー・ビーンの右腕なる若手社員を紹介されました。「ハーバード卒のあなたと同い年くらいの数量分析担当がいるからビリーの代わりに」ということで、デビッド・フォーストとう青年を紹介されました(*編集部注:現アスレチックスGM。ビリー・ビーンは現在同チームの上級副社長を務める。)彼は、今自分がどんな仕事をしていて、どんな分析を進めているかなどを熱心に教えてくださいました。とても興味深い、ワクワクした1時間半だったのですが、結局大リーグには、僕が就ける仕事はありませんでした…。

次の可能性…ということで、「スポーツ・エージェントを目指そう!」と思いました。日本にはそのような職業がほぼ存在していなかったので、その当時の日本人メジャーリーガー10人のエージェントに弟子入りしようと、連絡を試みました。球団と違い、皆さん、個人事務所として運営されているので、手紙を送る住所さえ探すのが大変でしたが、情熱をもって探せば見つかるものです。大リーグの球団同様、全員に手紙を出してみましたが、今回は一切の返事がありませんでした。それならば、「電話でアタックしよう」と思い立ち、紆余曲折ありながら、イチロー選手の代理人であるトニー・アタナッシオさんとコンタクトが取れ、「20分だけなら会いましょう」と言われお会いできました。結局1時間くらい話し込んだのですが、最後には、「一緒に仕事をしてみたいが、いま景気が悪いから君にしてもらう仕事がないんだよね。残念だけど。」と言われてしまいました。

ただ、その後に頂いた言葉は今でも鮮明に覚えていて、トニーさんから「お前がやっていることは絶対間違っていない。」とアドバイスされ、締めの言葉として「Believe in yourself!」と励まされました。当時、一人でもがいていた自分に、その言葉はどれだけ勇気を与えてくれたことかはかり知れません…。その後、サンフランシスコ、ロサンゼルス、テキサス、アリゾナ、ニューヨーク、ボストン、と何度も会社に有給休暇を申請してはエージェントに会いに行きました。相手の事務所の前で、3~4時間待ち伏せしたこともありましたし、春季キャンプ地のホテルロビーで待っていたこともありました。気合いと粘りで、結局、日本人選手を担当するエージェントには、全員会えました。でも、そんな状況でしたので、もちろん僕にはまだ仕事がありませんでした。

このエピソードは、さまざまの講演などでお話したことがありますし、僕のところに「スポーツの仕事をやりたいです」と相談に来る方には必ずお伝えします。なぜ行動しないのでしょうか? 仕事を辞めてスポーツビジネスに挑戦する前に、仕事をしながら、有給休暇を取りながら、もっと挑戦できることがあるのではないでしょうか。

1年間、金融の仕事をしながら、スポーツビジネスでの挑戦を模索しましたが、残念なことにひとつも仕事は見つかりませんでした…そこで、思い切って金融の仕事を辞めました。今振り返ると、甘すぎる考えのもとでの決断でしたし、今の知識と経験があれば、別のやり方を選んだと思います。短絡的に退職をしたゆえに、退職しても仕事がないので、僕が一番最初に就いたスポーツの仕事は、世田谷区のフットサルコートの管理人でした。世の中はそんなに甘くなく、自分ひとりでできることは限られています。自分が描いていたようなスポーツの仕事も簡単には見つかりません。会社を辞めて、何とか必死にもがけば、何とかなるという完全な自分自身に対する過信が導いた結果です。

情熱は持ちながらも、本来望んでいなかった仕事を1年半くらい続けた頃、たまたま、新聞で楽天がプロ野球界に新規参入を目指すというニュースを見ました。以前、お仕事をご一緒させて頂いた三木谷さん(*編集部注:三木谷浩史氏。言わずと知れた日本を代表する実業家。楽天株式会社代表取締役。)にご連絡したところ、20分だけ、プレゼンする機会を頂きました。

ありがたいことに、プレゼンを経て、球団準備室に加入させて頂いたわけですが、今、思うと僕の人生やキャリアは三木谷さんに拾ってもらったといっても過言ではありません。三木谷さんに当時「なぜ入社させてくださったのか?」と聞いたことがありましたが、本人からは「明日から働きます」というその場で言い切る言葉から覚悟を感じられたからと答えてくださいました。「本当に覚悟ある人は、即行動を起こせる人だ」「そういう人が社会を大きく変えるんだ」…三木谷さんのさまざまな言葉、いまでも忘れていません。やりたいんだったら口に出す。やりたいんだったらやる。有言実行という素晴らしい言葉がありますが、日本人は不得意なのかもしれません。リスクヘッジするためには使い辛い言葉なのかもしれません。僕は、海外で育ったからかもしれませんが、敢えて自分自身にプレッシャーをかけるため、実現したいことを全部口にするようにしています。そのプレッシャーが自分にとっての一番の行動する源になっているのを知っているからです。

ちなみに「歴史を創ろう」という言葉が、創業期の楽天イーグルスの合言葉でありました。球団の創業期には、その後、楽天本社の代表取締役副社長にも就任される島田さん(*編集部注:島田亨氏。人材企業のインテリジェンスの創業者で、現在は、株式会U-NEXT、取締役COO。)だったり、Yahoo!ショッピングのトップである小澤さんだったり、また同じ時期に起業した日本一のオンライン弁当宅配会社であるスターフェスティバルの岸田社長だったり、その後、さまざまな領域のトップランナーなどが集まっていました。ひとつの大きな志のもとに「歴史を創ろう」と青臭く言い切り、ひたすら前を見て走れる人間が集まっていました。

そんな原体験があったからこそ、その後のキャリアにおいても、常に社会に大きなインパクトを与えられるような事業を創り続けようと励んでいます。きっと一緒に働く仲間にも、自分が見せてもらった世の中が変わる瞬間や、世の中に大きなインパクトを与えられるような事業を目の当たりにした時の充実感や面白さを伝えたいのだと思います。現在、経営しているビズリーチは、「HR Tech(HRテック)」という、人事や採用領域をインターネットやデータ、テクノロジーの力で変革を起こそうとサービスを展開しているベンチャー企業で、創業から8年で約800名の仲間が集う会社になりました。我々の世代の新しい働き方を支えるサービスを次々と立ち上げています。また、ビズリーチを経営しながら、ルクサというアウトレットモール型のEコマースサービスも子会社として立ち上げました(現在はKDDIの連結子会社)。ありがたいことに、こちらの会社も現在は300名以上の仲間が集まる企業へと成長しました。世の中の課題を真摯に探し、構造から変革するような発明を実行するのは苦労の連続です。ですが、僕はプロ野球だろうが、働き方だろうが、小売りの世界だろうが、必ず新しい姿は存在すると思っています。全員が創業メンバー。価値あることを正しくやろう。最高の仲間と歴史を創ろう。これはビズリーチのクレドの一つでもありますが、このような言葉を大切に、これからも仲間と世の中にインパクトを与えるような課題解決を続けたいです。